一般社団法人エゾシカ協会

スペシャル対談 生物多様性


塚田宏幸 (バルコ札幌)

撮影筆者

 多様な生き物や生息環境を守り、その恵みを将来にわたって利用するために結ばれた生物多様性条約。その10回目の締約国会議(COP10)が10月、愛知・名古屋で開催されました。そこで今回は、NPO法人生物多様性フォーラム(愛知県西尾市)の「あいちの食(生態系サービス)でおもてなし事業」でプロジェクトリーダーを務める長田絢さんとのディスカッションをお届けします。

塚田(以下:塚) 「あいちの食(生態系サービス)でおもてなし事業」とは、地場食材で関係者に対しておもてなしをすることですか?

長田(以下:長) はい。COP10の期間中は関係者が約8000人訪れました。地場食材はもちろん、自然と共生し環境にもよく体にも安心安全な食材、未発掘食材の有効利用をして彼らをもてなしました。

塚 生物多様性というと、自然や動物だけのように思いますが、食料も含まれていますね。

長 例えば私たちが毎日食べている食事の材料は、太陽や水・土・森林の恵みそのものですが、近年、人間が自然に立ち入りすぎた事や、一度手がけた自然を放棄してしまったことによって、生態系のバランスが崩れ生物多様性は加速して失われつつあります。

塚 北海道のエゾシカも温暖化や天敵だったエゾオオカミの絶滅などの影響で、自然生態系のバランスが崩れています。

長 本州シカ、イノシシも同様です。温暖化も今の環境では加速の一途をたどると考えられていますし、絶滅してしまったオオカミはもう戻ってきませんね。

塚 皮肉にも生物多様性という言葉を広めたウィルソン氏が、この100年間で地球のおよそ半分の種が絶滅すると悲観的意見を述べていました。COP10では、エゾシカもメニューとして登場したそうですが、長田さんにとって、エゾシカを使う意義を教えてください。

長 エゾシカ料理は、COP10開催初日の記念式典にも用意されましたし、一部期間中、栄の料亭「つたも」で、エゾジカフルコース会席が楽しめました。エゾシカは害獣として扱われていますが、お肉だけ考えると栄養価が高く、美味しい食材であること。適切な頭数を捕獲し、私たちの食料としエネルギーにする事が、増えすぎたエゾシカを守ることにも繋がるということですね。

塚 食べることで、生態系のバランスや環境保全を考えるといったところでしょうか。

長 人間は自然と共生共存しながら支えあって生きていくことが不可欠です。食べることで環境保全を考えると親しみやすいですよね。


おさだ・あやさん
1982年神奈川県生まれ。食材卸業JFE-AYA代表。料理教室・食育セミナー・商品開発など活動は多岐にわたる。


エゾシカ協会ニューズレター29号に掲載

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