赤坂猛「シカ捕獲認証制度(DCC)への歩み」
  • あかさか・たけし
  • 一般社団法人エゾシカ協会代表理事。

第7回 改正鳥獣保護法附帯決議はどこへ消えた?―鳥獣専門職員の育成等―

この四半世紀、鳥獣保護法の改正の都度、立法府より行政府に対し「鳥獣管理を担う専門職員の育成や配置等」に関する『附帯決議』が出されてきていることは、既に記してきた(第4回参照)。本稿では、その附帯決議の内容と行政府の対応等について触れる。

1999年の附帯決議

1999年、鳥獣保護法は大改正された。特定鳥獣の保護や管理に関する都道府県の裁量を大幅に認める、という画期的なものであった。それ故、改正案を認めるに際して、衆議院及び参議院より「鳥獣行政のありよう」について18項目と多岐に及ぶ附帯決議が出された。

衆議院の附帯決議・全10項目のなかに、次のような『人材育成』等に関する「決議」が出されている。まずは、その全文をお読みいただきたい。

鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案(内閣提出第53号)
(参議院送付)成立(平成11年法律第74号)

附帯決議5 都道府県における早急な調査研究体制の整備、野生鳥獣保護の専門的な知識・経験を有する人材の確保及び育成、関係地方公共団体間の調整能力の向上等を図るほか、生息地の所有者、農林業や狩猟、自然保護等関係者などの協力、連携を得るためのネットワークの構築など野生鳥獣保護のための基盤整備が行われるとともに、都道府県を越えた広域かつ統一的な鳥獣管理が図られるよう、関係都道府県に対し、積極的に助言、指導及び財政的支援を行うこと。(環境省 2002)

少々長い引用となったが、『人材育成』等に関し決議では、「都道府県における野生鳥獣保護の専門的な知識・経験を有する人材の確保及び育成が図られるよう、積極的に助言、指導及び財政的支援を行うこと。」とある。都道府県の鳥獣行政を支える「専門的な人材」の育成等に対して、国が都道府県に助言・指導、更に財政的支援まで行うこと、という画期的な決議である。

筆者は、この決議より都道府県の「鳥獣行政」において永年の懸案事項であり続けてきた野生鳥獣の調査研究体制の整備及び専門的人材の育成・確保が大きく進展することを確信した。ところが……。

附帯決議のその後―環境省の対応―

1999年に人材育成等に関する画期的な附帯決議が出され、既に20年が経過した。しかし、管見の限りでは都道府県の新たな調査研究体制の整備や専門的な人材育成等に関する国の「指導・助言・財政的支援といった具体の動き」は特段講じられなかったようである。

附帯決議とは、衆・参議院の委員会が「…法律の改善についての希望を表明するもので、法律的拘束力を有するものではないが、政府としては、行政の責任当局としての立場からこれを尊重すべきことはいうまでもない。」(法令用語辞典 1978)とある。

1999年の附帯決議から20年が経過した。我が国の鳥獣行政の基盤となる懸案事項は依然として先送りされてきている。科学的で永続的且つ適正な野生鳥獣行政を支えるものは、都道府県自前の調査研究機関と専門家からなる体制(の基盤整備)である。果たして、1999年の附帯決議に「時効」はあるのだろうか。今後とも、「志」ある国の対応を注視してゆきたいと思う。

次回は、人材育成に関する「大正の取り組み」などを紹介する。


初出 エゾシカ協会ニューズレター第46号(2019年3月)