赤坂猛「シカ捕獲認証制度(DCC)への歩み」
  • あかさか・たけし
  • 一般社団法人エゾシカ協会代表理事。

第4回 鳥獣行政を担う専門職員

平成27年度より始めたシカ捕獲認証制度(DCC)は、市町村等の「地域」におけるシカ管理者の育成を目指している。そこで、今回は、都道府県におけるシカを含めた野生鳥獣の専門職員の配置等について触れたい。

都道府県と「鳥獣の専門職員」

平成26年、鳥獣保護法が改正された際、衆参両院より多岐にわたる附帯決議が出された。その一つに鳥獣の専門職員に関するものがあった。すなわち、「科学的・計画的な鳥獣管理を効果的に推進するためには、鳥獣管理に関する専門的知見を有する職員が都道府県に適切に配置」されるよう国の積極的な支援を促す(命じる)ものであった。要するに、立法府は、行政府(都道府県)には鳥獣管理の専門職員が適切に配置されていない、と看破しているわけである。

平成十四年法律第八十八号
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律

鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

これにさかのぼる平成7年、国(行政府)は、生物多様性条約の批准を踏まえ、我が国の生物多様性等を推進するための初の「生物多様性国家戦略」を策定した。この国家戦略のなかで、「鳥獣は、自然環境を構成する重要な要素の一つであり、(略)永く後世に伝えていくべき国民の共有財産である」とし、「このため、(略)鳥獣の保護管理の充実強化を図っていく」と宣言している(第3部第1章第3節/野生動植物の保護管理)。

国民の共有財産である鳥獣の適正な保護管理が、都道府県の専門職員の「不適切」な配置状況の中で果たして「適正に執行」されるのであろうか。平成11年以降の鳥獣保護法の改正の都度、立法府より都道府県等における鳥獣管理を担う専門職員の育成や配置等について再三決議され続けてきている。しかし、事態の好転はいまだ観えない。

北海道の取り組み

この十数年間、北海道ではエゾシカを含めた野生鳥獣問題を担える専門家のありようについて、官民を挙げての議論や検討・試行等がなされてきたことは本連載で触れてきた。ここでは、北海道議会の質疑から「鳥獣の専門家」に関するやりとりを観てみたい。

平成26年3月に開催された北海道議会において、池本柳次議員より「エゾシカ対策を推進するための人材育成」に関する質問があった。これまでのエゾシカ保護管理計画の推移やエゾシカ条例案等を踏まえ、地域ごとにエゾシカの適正な管理に向けて企画・実行を担える「専門官」の配置の必要性を指摘し、道の見解を求めるものであった。

道の見解は、シカ条例(案)において、まず地域ごとでエゾシカ問題に対処できる人材の育成・活用が必要とし、今後、「振興局の職員に対し専門的な研修を実施するとともに、市町村や農協の職員へも研修への参加を促す」とし、「地域における人材の育成について積極的に取り組む」との答弁であった。

この答弁のめざす方向は、シカ捕獲認証制度が取り組む市町村等の地域におけるシカ管理者の育成とも通ずるようにも思われる。

取り残される? 市町村・農協職員

現在(平成29年3月6日)、北海道議会では平成29年度予算等が審議されている。その29年度の新規事業として、振興局職員のエゾシカ研修事業が計画されている、と漏れ聞く。先の道議会の質疑から3年を経たとはいえ、道職員向けの研修事業が具体化されることは一歩前進である。しかし、取り残された「市町村や農協職員」研修についてはどうなるのであろうか。道庁の「エゾシカ研修事業」を注視してゆきたいと思う。

次回は、エゾシカの管理計画と人材育成をとりあげる。


初出 エゾシカ協会ニューズレター第42号(2017年3月)