赤坂猛「シカ捕獲認証制度(DCC)への歩み」
  • あかさか・たけし
  • 一般社団法人エゾシカ協会代表理事。

第5回 エゾシカの保護管理計画等と「人材育成」

1999年6月、鳥獣保護法は改正され「特定鳥獣保護管理計画制度」が創設された。この法改正は、当時、深刻な社会問題を惹起していたクマやシカ等に関する鳥獣施策に際して、知事の裁量を大きく認める画期となるものであった。これにより都道府県の鳥獣行政は、永年に及ぶ全国一律の規制から「解放」されたのである。

道庁は上記の改正を踏まえ、翌2000年9月にエゾシカ保護管理計画(第1期)を策定し、以来、現在の北海道エゾシカ管理計画(第5期)に至っている。この5つの計画の中でエゾシカの保護管理に係る「人材育成」は、第3期から管理目標を達成する方策の一つとして位置づけられてきている。以下、その概要を観てゆく。

北海道エゾシカ保護管理計画

初めて「担い手対策」を盛り込んだものの…(第3期計画)

第3期は2008年4月から2012年3月の5か年計画である。エゾシカの生息動向は第2期(2002年4月~2007年3月)を経ても依然として増加傾向にあることから、この第3期においては有効活用による持続的な資源管理の視点等もとりいれていた。

「人材育成」については、第2章保護管理の推進の「2 目標達成のための方策」のなかで、『狩猟の担い手対策』として記されている。即ち、長期的な狩猟者人口の減少を踏まえ、新たに「専門的な人材育成など保護管理の担い手を確保するための方策について検討を進める。」とある。

道庁が2010年4月にエゾシカネットワーク協議会を立ち上げ人材育成事業に取り組んだのは、この第3期の『狩猟の担い手対策』を踏まえたものと筆者は思料している。しかし、この事業で目指した捕獲専門家や野生鳥獣保護管理者の養成及びこれらの制度設計は、何ら成果を生み出すことなく2013年3月に終了したことは既に触れたところである(第1回参照)。

「人材育成検討」掲げるも成果みられず(第4期計画)

続く第4期は、2012年4月から2017年3月の5か年計画である。エゾシカの生息動向は第3期中においても減少傾向には至らず、この第4期では最大限の捕獲数確保に努めるとともに、狩猟者人口の減少も見据えた実効性のある個体数管理を目指す、とした。

「人材育成」については、第2章「保護管理の推進」のなかで、『担い手の確保』として、概略次のように記している。即ち、第3期に引き続き、(狩猟者等)人材育成など保護管理の担い手、及び、鳥獣被害対策実施隊等の専門的に捕獲を実施する者などを確保する仕組みについても検討を進める、としている。

第4期においても人材育成等の検討の推進を掲げたが、果たしてその「検討成果」はとりまとめられたのであろうか。人材育成等の「検討を進める」と唱え、既に10年が費やされた。

いよいよ待ったなし
専門捕獲者の確保(第5期計画)

本年4月からは第5期(2017年4月~2022年3月)の北海道エゾシカ管理計画となった。人材育成について第5期では、第2章管理の推進のなかで、『捕獲体制の構築』には「……行政機関等における専門知識や技術等を有する人材の配置と育成」を、また、『担い手の確保』には「……認定鳥獣捕獲等事業者や……鳥獣被害対策実施隊等の専門的に捕獲を実施する者を確保・活用する仕組み」を検討する等と明記している。

エゾシカの管理を進めるためには、行政機関等にも専門的な人材が必須であることが初めて記された。もはや「検討事項」を先送りする猶予はない、はずだ。この第5期では、官及び民の新たな人材育成事業が着手されることを切望してやまない。


初出 エゾシカ協会ニューズレター第43号(2017年10月)