伊藤英人の狩猟本の世界
171.『豚肉の歴史』K.M.ロジャーズ著、伊藤綺訳、原書房、2015年
138番「モツの歴史」のシリーズ。世界各地の豚料理について、料理書を中心に情報を得てまとめている。イギリスで最も贅沢な豚肉料理は「乳飲み子豚のロースト」だそうである。沖縄の人がポークと呼ぶスパムは、米軍と深い関係があった。
「豚肉料理」というより「豚の料理」という考えで、日本で豚料理といえば赤身肉(ロース、ヒレ、バラ)をおもに指すところだが、モツや血液、ハム・ソーセージにまで話が広がる。家庭で内臓や骨付き肉を扱わない、家庭屠畜をしない日本は、トンカツ・ラーメンはおいしいものの、豚との距離がまだ遠いのではないかと不安になった。イノシシの活用が豚肉文化の発展に寄与する日も来るのだろうか。