伊藤英人の狩猟本の世界

285.『野生動物のロードキル』柳川久監修、塚田英晴・園田陽一編、東京大学出版会、2023年

285.『野生動物のロードキル』柳川久監修、塚田英晴・園田陽一編、東京大学出版会、2023年

野生動物の種類によっては、狩猟死よりも交通事故死のほうが多いことがあるらしい。これは衝撃的で大きな問題である。このことを知って関心が高まった。

ロードキル分野の研究は徐々に盛り上がりつつあり、それにエゾシカ協会や勉強会「野生生物と交通」が重要な貢献をしている。事故は少ないほどいいので、今後に期待したい。狭い日本は研究に適している。

フェンスを計画的に配置したり、野生動物用の歩道橋をつくったりしているが、轢死個体の利用に言及しているのは浅川氏だけであった。死体は資源なので、疫学以外の分野でも積極的に利用してほしい。状態によっては(法律と感染症には注意)、肉も毛皮も利用できる。皮なめしの練習としては貴重な材料である。日本ではこうした資源を利用する文化が衰退しているように感じる。漂着クジラの報道をたまに見るが、いつから食べなくなったのだろうか。英語で「roadkill recipe」と検索すれば、轢死体の料理本や情報がいろいろ出てくる。176『生き物を殺して食べる』にも、ロードキル待ちの一般市民が登場する。そんなノリがあってもいいのではないだろうか。

わな猟者としては、事故発生場所が予測できるのであれば、道路の両脇付近に足くくりわなを置きたくなる。道路で轢かれるよりも状態のいい体が手に入る。もしわなに感づかれて引き返したり、わなの場所を学習または情報共有されたりして捕獲率が低下しても、それなりの効果があったとみなせる。ただし、後者の「学習または情報共有」は本当に起きるのか疑わしい。経験的には、同じ場所の同じわなにかかりすぎている。先客の血や暴れた痕跡は気にしないようである。