伊藤英人の狩猟本の世界

58.『死を食べる』宮崎学著、偕成社、2002年

死をテーマにした、動物の写真集。死体横に定点カメラを設置し、土に還るまでを撮影。アリ、ハエ、シジュウカラ、ハクビシンなど、さまざまな腐肉食者が訪れる。著者は、われわれも死を食べている、と表現する。

野生では死体は大人気である。解体を始めると、鳥などの見物客がきて、作業が終わるのを待っている。おいてきた骨は一晩できれいに除肉され、骨も徐々にかじられて貴重なカルシウム源となる。

「死んだあとどうなるか」という漠然とした不安に対し、宗教は答えを用意している(「あの世の事典」参照)。しかし、確実な答えはこの本にあるとおりである。

実際には腐敗臭と、ウジのうごめく音が加わる。腐敗臭の強烈さは、生きてきた証、命の最後の主張に思える。

58.『死を食べる』宮崎学著、偕成社、2002年