伊藤英人の狩猟本の世界
294.『思考する豚』ライアル・ワトソン著、福岡伸一訳、木楽舎、2009年
ブタ(イノシシ含む)の博物学。多岐にわたる博学もさることながら、自らブタを飼い観察している。全編にわたり豚愛があふれている。著者は厳密に科学に基づくことをそんなに意識しないようで、引用もあいまいで、批判もあるらしいが、研究用でなければ十分。
ユリ根を一部だけ残して食べ、また生えてくることを見越しているというのは驚きだったが、これを農業と呼ぶのは大げさと思う。
ブタは雑食だからこそ冒険好きで賢くなっているらしい。確かに、わなに強い。あからさまなエサには、まったく反応しない(そしてタヌキがかかる)。埋めたわながバレて掘り返されたことも何度かある(掘り返しに失敗し、鼻で作動してつかまえたこともある)。わなかけ業にとって相手に不足はなく、永遠のライバルといえる。