伊藤英人の狩猟本の世界

265.『いきもの六法』山と渓谷社いきもの部編、山と渓谷社、2022年

262.『これからの日本のジビエ』押田敏雄編、緑書房、2021年

複雑になってきた生物保護の法律をまとめた本。狩猟者は外来種を物理的に減らせるため社会から応援されている(と思いたい)。しかし、扱いによっては違法行為となってしまう。

「鳥獣保護管理法にもとづく許可を得て捕獲した場合、捕獲後に生きたまま移動させる行為は、処分が目的である場合でなければ外来生物法の違反行為となる。捕獲した場所で殺処分を行えばその心配はない。」

この文で、「処分」「殺処分」という言葉がひっかかる。獲物を資源とみなしていないではないか。そうなるともはや狩猟ではない。

稀少動物、外来種などの「種に対しての規制」のほかに、国立公園や鳥獣保護区などの「場所に対しての規制」がある。さまざまな省庁からの規制となり、重複もあるが、著者は「縦割りの弊害」ではなく、目的が異なるためしょうがないことであるとしている。これらを扱う行政職員には便利な本であり、間違いなく必要な知識ばかりだが、子を持つ親としては、禁止事項の羅列にうんざりしてしまった。図鑑や「虫のとりかた」のように多くの種に出会う情報が先にきてほしい。小学館の図鑑NEO「昆虫」には、「昆虫の多くは、周りの環境さえ安定していれば、あなたがつかまえたくらいでは、へることはない」とある。願わくば、ちょっと失敗した一般人ではなく、悪質な業者だけを厳しく取り締まってほしい。別件だがナイフの銃刀法違反も、うっかりナイフをしまい忘れた人を罰するものではないはずである。