伊藤英人の狩猟本の世界

253.『味と匂いをめぐる生物学』斎藤徹編著、アドスリー、2013年

253.『味と匂いをめぐる生物学』斎藤徹編著、アドスリー、2013年

嗅覚と味覚。大学学部生レベルで、やさしめ。五感は平等ではなく、優先順位があり、嗅覚は味覚より上位にくる。このことはわな猟者にとってかなり厄介な事実である。土中のくくりわなを掘り返されたり、鼻で探られた際に足くくりわなで鼻先をとらえたりした経験から、嗅覚を気にせざるをえない。シカは風が吹くたびに足を止め、風を嗅ぐ。

ヒトとは比べ物にならないほど優秀な嗅覚を、欺くか、逆手に取ることはできないだろうか。そのヒントのひとつとしてフェロモンがあった。ブタはアンドロステノン、シカはシカラクトンというフェロモンが特定されている。フェロモンでメスを呼び、わなで捕らえられないかと考え、少し調べたが、美女が寄ってくるという怪しい香水に行きついた。とてもほしいが、高い。また、逆に、メスイノシシの尿を抽出・加工してオスを呼ぶ猟のことも聞いたことがある。これらは発情期に性選択的に(種選択的にも)捕獲できる可能性を感じる。