伊藤英人の狩猟本の世界

189.『洞窟オジさん』加村一馬著、小学館、2015年

189.『洞窟オジさん』加村一馬著、小学館、2015年

著者は中学生のとき親の暴力に耐えかねて家出。そのまま43年も野外生活を続けたすごい人。この自伝やテレ朝「激レアさんを連れてきた。」出演でブレイク、ドラマ化もされた。

ネズミ、イノシシ、コウモリなどいろいろな野生動物を捕食して生きのびてきた、本物のサバイバル達人。イノシシは自身をおとりにして落とし穴におびきよせる、かなり危険な猟法。タヌキとは穴で一緒に寝るくらい仲良くなっており、かわいそうだから食べなかった。これらの捕獲法が巻末にまとめられているので、法律に注意しながら試みてほしい。

尊敬せずにはいられないすばらしいスペシャリストなのに、社会は彼をホームレスと呼び、逮捕したり、社会復帰させようとする。達人をつまらない一般人に変えるための社会復帰など、誰にとって何の意味があるのだろうか。つまはじきにする理由はひとつもない。むしろ英雄として国に表彰してもらいたい。今後もぜひ、得難い経験をわれわれにどんどん伝えていただきたい。