伊藤英人の狩猟本の世界
184.『脂肪の歴史』ミシェル・フィリポフ著、服部千佳子訳、原書房、2016年
食用の脂肪に公正にスポットを当てる良書。脂肪は健康ブームやニセ情報に振り回されながらも、栄養価が高くおいしいがゆえに利用されつづける。人間は脂肪のおいしさを素直に認めればいいのに、と思う。マーガリンへの迫害の歴史は悲惨。
訳書なのでバターやオリーブオイルがよく出てくるが、日本版ならラーメン、霜降り肉、唐揚げかな、と想像してしまう。しかしこれらの歴史は浅い。
狩猟肉でも、ロースやモモなど赤身肉ばかり注目されるが、イノシシでは私は脂身(背脂)と骨髄(スープの素)がとくにおいしいと思っている。これらのおいしさをブタでとことん引き出したのが、千石自慢ラーメンに代表される背脂チャッチャ系とんこつラーメンである。イノシシならさらにおいしくなるはずである。
原書房の「食」の図書館シリーズはどれもおもしろい。肉系も多数出ている。