一般社団法人エゾシカ協会

北海道が独自にエゾシカ肉衛生管理マニュアル策定に着手


2005年12月27日

 エゾシカ保護管理のための「有効活用」を模索する北海道は、野生シカ肉の衛生管理マニュアルを独自に策定したうえ、民間業者が出荷するシカ肉の安全性を第三者チェック機関が認証・推奨する仕組みづくりに乗り出しました。12月5日に開かれた平成17年第4回北海道議会定例会予算特別委員会第1分科会で、鎌田公浩委員(エゾシカ協会顧問)の質問に答えました。質疑応答の模様をダイジェストでお伝えします。

鎌田公浩委員
 道東を中心に各地で先進的なエゾシカ有効活用の取組みが始まっています。単なるブームで終わらせないためにはしっかりした体制が必要で、捕獲から解体・衛生管理・製品化・流通、さらに観光の振興や地域振興につながる総合的な取組みが必要だと思うのです。
 最初に、今年度有効活用検討委員会を設置したことは承知していますが、概要について伺います。
 また、有効活用の基本方針を検討する重要な機関と考えるため充実が必要であると考えるが如何ですが。

石井博美・自然環境課参事
 今年6月、流通販売・調理・地域関係者らと研究者を招いて「エゾシカ有効活用検討委員会」を立ち上げました。消費者が手軽にシカ肉を買える仕組みや、生体捕獲と一時飼育技術の確立、適正な衛生管理とブランド化、ロースやヒレ肉以外の部位の活用など、さまざまな意見が出ています。今後も開催回数を増やすなど、幅広い議論がされるよう努めていきます。


鎌田委員
 道内各地にエゾシカ肉を扱う新しい食肉処理施設が設置をされるなど、供給体制の整備も進んでいます。しかし、牛・豚などの家畜と異なり、衛生管理の定めがないため、それぞれ自主的に衛生処理をしているのが現状です。安心安全なエゾシカ肉を供給するために、食肉処理業者が共通して実行できる新しい基準が必要ではないでしょうか。

田中正巳・環境室長
 エゾシカなどの野生動物を食肉として処理する場合、食品衛生法に基づく食肉処理施設での衛生的処理が義務づけられています。そこで道では、野生シカを衛生的に処理できる「移動式簡易食肉処理施設」の活用など、衛生的な一次処理の手法を確立するためのモデル事業を現在実施しています。また来年度は釧路・根室・日高支庁管内などで、HACCP手法を取り入れるなど、衛生処理の手法確立のためのモデル事業などを進め、道独自に衛生管理マニュアルの作成を検討していきます。


鎌田委員
 新しい衛生管理マニュアルは早急に普及させる必要があると思います。さらにマニュアルに沿った製品について処理過程を確認するシステム、いわゆるサーベイランスを確立して、消費者が認識できるシステムも必要ではないでしょうか。

石井参事
 道も、そのようなシステムが必要だと考えています。消費者が速やかに認識できるような、第三者機関による認証や推奨などの仕組みを検討していきます。


鎌田委員
 道東などで取り組みが進む捕獲野生ジカの「一時飼育後の出荷」方式は、世界的にも先進的です。道として、研究機関などの協力により、技術確立に向けて支援する必要があるのではないでしょうか。

田中室長
 野生のエゾシカは季節ごとに肉質にバラツキがあり、また供給が不安定なので「一時飼育」は有効な手段です。阿寒町で取り組みが始まっており、根室・日高支庁管内でも民間ベースで一時飼育の検討が進んでいます。来年度からは道畜産試験場が基礎データを収集し、飼養に関する基礎資料を作成して、技術的な支援に努めていきます。


鎌田委員
 エゾシカ有効活用は道民の関心も非常に大きく、先般のエゾシカ協会の試食会にも大変多くの方にご参加をいただきました。有効活用の取り組みを総合的に進めていくための今後の方針を聞かせてください。

前田晃・環境生活部長
 農林業に深刻な被害をもたらしているエゾシカの個体数管理に務めつつ、シカを北海道の魅力的な資源としてとらえ直し、地域おこしや新産業確立につなげるべく有効活用を推進してきました。来年度も民間の取り組みを支援するために、一時飼育や製品のブランド化についての基礎調査、また有効活用マニュアルの作成に向けた検討などで、より一層取り組みを加速したいと考えています。