一般社団法人エゾシカ協会

平成13年度エゾシカ対策協議会について


 7月25日に行われた協議会の内容について当協会と関連が深い部分を抜粋でご紹介します。今まで北海道の鹿に対する認識は、どちらかというと害獣的な考え方が強かったと思いますが、エゾシカの新しい価値を高める方向の考え方に変わってきているように感じます。当協会の活動も小さいかもしれませんがは一つの成果として見ることも出来ると思います。
 エゾシカ肉の有効活用に関する当協会の要望書の件は、籠田さんのレポートにありますので省略します。「 」内は、発言部署です。


「野生生物室」

 現エゾシカ保護管理計画の設定期間が今年度いっぱいなので、来年度からの次期計画の策定作業を行っている。項目立ては現計画と同じであるが、計画対象区域を全道とするなど、策定方針は現計画とは変わる部分がある。
 当面は個体数指数50を目指すことは変わらないが、次期計画では将来的目標の指数25について、本当にそれが適切か、ということも焦点になると思う。

「農業改良課」
 侵入防止柵は初期投資も大きいが、維持補修の費用も相当かかるため、恒久的な施設とはまったく考えていない。そういう意味で、適切な頭数管理が大前提である。森林に隣接するなど条件の悪いところで集中的に被害が発生しており、こういう所ではエゾシカと農業は両立し得ないかもしれない、という危機感がある。農業被害をゼロにできないのは分かるが、ある程度は野生鳥獣の被害を補償する制度なども必要ではないかと思う。そうしなければ、全ての野生鳥獣を無くするか、農業が撤退するかという話になりかねない。

「副知事」
 道民合意を得た適切な個体数指数まで落として、なお被害が発生するのであれば、それは一般財源で補償することも道民理解を得られることではないかと思う。共生という概念を打ち出しているのであれば、政策として有り得る話なので、これから考えていく必要がある。

「環境科学研究センター」
 農政部で進めてきた有効活用は、鹿被害を受けている農家に収益を還元する目的で行われてきたと聞いているが、今後、地域社会において、鹿肉や鹿ウォッチングなどの有効活用を更に進めていく必要があると思う。そうなれば、個体指数が50以下に下がり農業被害が減少したときに、その地域でのエゾシカの価値が変わってくるのではないか。

「農業改良課」
 我々の行った事業は、鹿肉の有効活用の道を開こうとしたもので、被害農家への収益還元に目的を絞っていたわけではないのだが、十勝、網走管内での整備が終わり、また国の山村振興事業のなかで、これまで道が行ってきたような事業については対応できるような制度改正もあったので、農政部としては今年度の対策から外している。

「副知事」
 広い視点で考えれば、ヨーロッパで高級食肉のエゾシカは道民全体の財産である。しかし、今、我々には晴れの日にみんなでエゾシカを食べるような習慣はない。道民にとってエゾシカ肉は、そのイメージが出来ていない段階なので、今、我々がどういう対応をするかで将来のイメージが変わってくると思う。正規な制度のなかで、しっかり流通させていくことが重要だと思う。

「農業改良課」
 そういう話になると農業なのかという疑問がある。

「野生生物室」
 日本では野生生物は無主物という位置付けになっており、欧米とは事情が異なっている。

「副知事」
 現在の政策も良いのだが、これからは新しい目的が出てくる可能性があると思う。それは農政部でやるかどうかということは別として、北海道全体で考えると、どう流通させるかという20年、30年後を見据えた考え方も必要だ。

(報告 エゾシカ協会事務局 井田宏之)

エゾシカ協会ニュースレター No.8(2001年10月1日発行)より