一般社団法人エゾシカ協会

高橋知事、道議会で積極発言「エゾシカ有効活用を」


2004年10月20日

 第3回定例議会を開催中の北海道議会で9月24日、鎌田公浩議員(自民党、札幌市)が一般質問に立ち、道のエゾシカ政策についてただしました。捕獲したシカの有効活用推進を求めた鎌田議員に対し、高橋はるみ知事は「北海道の新たなビジネスチャンスの可能性を秘めている。魅力ある資源としてエゾシカを活用し、新しい産業起こしや雇用の創出など地域振興に繋げたい」「地域産業振興の観点から有効活用の取り組みを支援したい」などと積極的な姿勢を鮮明にしました。
 また、現行法規では衛生基準をクリアできない「捕獲現場で解体した鹿肉」の安全性について、鎌田議員は「捕獲場所近くに内臓を摘出できる施設(設備を搭載した移動車両など)が必要では」と質問。保健福祉部長が「肉の汚染防止を図る食品衛生上の観点から有効な処理方法の一つだ」と答弁しました。
 主な質疑応答は以下の通り。

質疑応答の録音はこちら(北海道議会のサイトへ)

高橋はるみ氏
高橋はるみ北海道知事(北海道庁のウェブサイトから転載)

鎌田氏
エゾシカ有効活用について質問する鎌田議員(2004年9月24日。北海道議会のウェブサイトから転載

 


鎌田公浩議員 シカ問題をどのように認識しているか。

高橋はるみ知事 「エゾシカ対策協議会」を設置して個体数管理や農林業被害防止、交通事故などの総合対策に取り組んできた。農林業被害対策の成果が表れているが、空知や日高などでは被害額は増加傾向にある。このままシカが増加した場合、被害は逆戻りすることも懸念され、積極的にエゾシカの個体数調整を図ることが必要と考えている。

鎌田議員 捕獲個体の多くが残滓として廃棄処理されている。有効活用を図り、エゾシカを本道の貴重な天然資源として積極的に利用すべきだ。

環境生活部長 食肉のみならず皮や角などの活用、エゾシカを利用した地域振興など多角的な検討が必要だ。「エゾシカ有効活用ワーキンググループ」で食肉の衛生管理、加工品の開発や流通、シカを利用した観光施策など有効活用や支援制度を検討している。今後も外部有識者の意見を聞くなど新たな有効活用について積極的に取り組んでいく。

鎌田議員 鹿肉の安全・安心をアピールし、北海道のブランドとして確立するには衛生確保が重要。捕獲場所近くで内臓を摘出できる施設として、移動可能な車両を活用した簡易な一次処理施設を検討しては。

保健福祉部長 野生獣畜は道の「野獣肉の衛生指導要領」に基づいて(解体前に)食肉処理施設に搬入することとしてきたが、移動可能な施設での一次処理は食品衛生上の観点から有効な処理方法の一つ。他府県の状況やFAOの基準を参考にしながら具体的に検討したい。

参考    FAOの基準について
野獣肉の衛生指導要領について

鎌田議員 有効活用の取り組みを拡大するために、鹿肉の取引や新たな製品開発に取り組んでいる事業者を支援すべきだ。

知事 鹿肉は精肉のほかハム・ソーセージなどにも加工されているが、こうした取り組みを促進するには、研究や工夫を重ね、高級化や新たな用途開発を図っていく必要がある。これまで地域産業振興の観点から地域の商工会や研究会の鹿肉有効活用の取り組み支援してきた。支庁の地域政策推進事業として独自に資源化も検討している。各種支援制度を活用しながら、今後も研究開発から開業準備、市場開拓まで事業の進展段階に応じて積極的に支援をしていきたい。

鎌田議員 ニュージーランドでは養鹿産業が確立され、鹿肉が高級食材として輸出されている。エゾシカも畜産業の一環として「特用家畜」としての法整備を国に要望し、高品質鹿肉の衛生的・安定的な供給が可能な養鹿について検討すべきだ。

知事 我が国では狩猟・駆除の鹿肉が主に流通している。根室支庁で独自に事業化を検討しているが、養鹿については需要の確保や飼養方法、衛生管理の確立、採算性など多くの課題を抱えている。エゾシカ対策協議会で各課題を検討しながら産業化に向けて取り組んでいきたい。

鎌田議員 エゾシカは本道の貴重な天然資源としての価値を有している。食材を中心として有効活用を図り、安全・安心の北海道ブランドとして売り出し、新たな北海道の産業起こしなど地域振興に繋がるよう積極的に取り組むべきだ。

知事 エゾシカは農林業被害をもたらす反面、本道の貴重な自然資源であるため、人間との共生を目指した「エゾシカ保護管理計画」を策定し、個体数管理や被害防止対策、有効活用の検討など、エゾシカ総合対策を進めてきた。鹿肉は一部高級食材として利用され、広く一般に流通する可能性がある。消費者の安全・安心といったニーズに積極的に応えることで、北海道の新たなビジネスチャンスの可能性を秘めていると考えている。関係者と連携を図りながら、エゾシカを魅力ある資源として活用し、将来的には新しい産業起こしや雇用の創出など地域振興に繋げたい。
エゾシカ協会ニューズレター第17号(2004年10月20日発行)から転載