一般社団法人エゾシカ協会

原文宏 「エゾシカのロードキル」


1 はじめに
 最近、北海道では、野生動物のロードキルの発生件数の増加、発生カ所の拡大が見られます。カナダのブリティッシュコロンビア州では、このロードキルデータを野生動物の生息状況把握にも活用しています。(野生動物事故報告システム(WARS)と呼ばれています。)
 北海道でも、野生動物のロードキル発生状況を北海道開発局が道路パトロール日報から抽出したロードキルデータをもとに、(社)北海道開発技術センターが分析を行っています。本フォーラムでは、この分析結果の一部を報告します。

2 野生動物のロードキル発生状況
 北海道の国道におけるロードキルデータ(1996年~2003年)によれば、全体の事故件数は増加傾向を示しており、最近は毎年2500件以上の野生動物が回収されています。そのうち、35%をエゾシカが占めており、次いでキツネ28%、鳥類19%、タヌキ10%の順です。
 また、2003年の事故発生カ所の分布をみるとキツネは道南に高密度で発生している地域があり、タヌキは北海道東部よりは西部地域に事故発生が集中しており、鳥類は沿岸部が多くなっています。このように、野生動物の種類によってロードキルの発生分布は異なっており、生息環境や移動特性などとの密接な関係が推定されます。

3 エゾシカのロードキル発生状況
 エゾシカのロードキル発生件数は右上がりに増加しています。また、北海道内のJRに衝突もしくは前方にエゾシカを発見したため停止した件数の合計値も同じような増加傾向を示しており、道路だけの問題ではないことがわかります。
 北海道の地域を東と西にわけて傾向をみると、いずれの地域でも増加傾向を示しており、事故件数の絶対値は東部地域が約3倍になっています。しかし、最近の傾向をみると東部地域の事故件数はピークから横ばいといった傾向を示しており、西部地域は確実に増加する傾向を示しています。
 発生カ所の分布は、1996年ごろは北海道東部地域に限られていたものが、2000年には北部や西部の一部にも広がり、2003年には道南地域にまで達しています。高い発生密度の地域も東部だけでなく襟裳岬周辺にも見られるようになってきました。発生カ所の分布は、北海道全体に拡大しており、その傾向は西部地域ほど急激に増加しています。
 発生件数を季節別にみると春と秋にピークがあり、秋の方が多くなっています。地域的にみると、冬は釧路・根室地域に集中して発生しており、北海道中央部の事故は減少しています。最近、増加している襟裳岬地域は秋に多く発生します。このように、発生カ所も季節によって異なった傾向を示します。

4 おわりに
 このようにロードキルデータは、野生動物の分布、移動状況などを把握する上で貴重なデータです。しかし、現状で北海道全体で経年的にデータが整理され10kmメッシュデータとして整備されているのは国道だけです。主要道道、JR、高速道路などのデータも加味されることによって、さらに詳しい野生動物の生息状況を把握することに役立つことは明白です。関係機関の連携を強めることを期待しますし、当センターも積極的に協力していきたいと考えています。

原 文宏 氏(北海道開発技術センター 理事)