一般社団法人エゾシカ協会

北米で発生した野生ジカの「狂牛病」酷似疾患に関する緊急アピール


北米で発生した野生ジカの「狂牛病」酷似疾患に関する緊急アピール

2001年10月7日
日本哺乳類学会哺乳類保護管理専門委員会

 最近の報道によると,アメリカ農務省はアメリカとカナダにおいて,野生ジカに「狂牛病」に似た症状を示すCWD(Chronic Wasting Disease, 「慢性消耗性疾患」,脳がスポンジ状変性を示す)が発生したことを確認し,緊急の調査を行う予定であるという。

 CWDの感染経路は必ずしも明確ではないが,ミュールジカやエルクでは飼育下で以前から発症が知られていたことから判断して,これらの飼育ジカを介して野生ジカに広がった可能性は否定できない。したがって,CWDの発生を抑えるためには,飼育ジカの管理を徹底し,野生ジカとの接触を完全に断ちきることが必要である。

 現在わが国でも全国に180ケ所以上の養鹿場が存在し,総計4600頭以上のシカ類が飼育されている。しかしながらその飼育状況や管理の実態については不明な点が多く,飼育ジカにCWDが発生し,逃亡や放逐によって野生ジカへと感染が広がる懸念は捨てきれない。

 以上の点を踏まえ,私たちは関係当局に対し,養鹿場での飼育ジカの管理状況についてすみやかに調査するとともに,以下の点を指導するよう強く要望する。

  1. 飼育ジカを絶対に野外に放逐しないこと,また飼育管理を徹底し,逃亡を防ぐこと。
  2. 飼育ジカを処分するに当たっては殺処理し,死体は必ず焼却すること。
  3. 肉骨粉を飼育直に餌として使用しないこと。

このアピール文は、日本哺乳類学会の許可を得て掲載しています。お問い合わせは同学会へどうぞ。

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