第4回DCCネットワーク研修会「ヒグマ問題の最前線」を開催しました!(2017年4月23日)

今回は、ヒグマを対象とした研修会を開催しました。シカの捕獲で山に入る際には、当然ヒグマの知識も必要となります。また、地域で活動する時には、シカだけではなく他の動物種にも対応しなくてはならない場合も多々あるでしょう。ヒグマの場合、シカのように効率的に「捕獲する」というワケではなく、人との軋轢を減らしつつ、ヒグマ個体群も維持していく方法を模索しなくてはなりません。そのため今回は、まずヒグマの現状を知ってもらうための基礎編との位置づけで行いました。

特別講師として、北海道立総合研究機構北海道環境科学研究センターの間野勉氏と酪農学園大学の佐藤喜和氏をお招きしました。DCCネットワーク会員14名、講師7名が集まりました。

まず間野氏から、「北海道におけるヒグマ管理施策の経緯と課題」というタイトルで発表がありました。

間野勉さん

特別講師 間野勉さん 1960年東京生まれ。北海道立総合研究機構環境科学研究センター自然環境部長。国際自然保護連合種の保存委員会クマ専門家グループ委員、日本哺乳類学会理事・評議員、ヒグマの会副会長。北海道ヒグマ管理計画に基づくヒグマの適正管理に必要な調査研究に携わる。ヒグマのふるまいは鏡に映った人間のふるまいなのだ、と考えるようになった。

北海道におけるヒグマ対策の歴史から、ヒグマと人との軋轢の要因や対策についてお話されました。人を襲うような問題グマを作り出さないために、人間側が予防対策をする重要性も強調されました。ヒグマの場合、シカと違って個体数だけに注目するのではなく、問題グマの発生率に注意する必要があることなど、ヒグマならではの課題が報告されました。

佐藤喜和さん

特別講師 佐藤喜和さん 1972年東京生まれ。酪農学園大学環境共生学類・教授。日本クマネットワーク・副代表,ヒグマの会・事務局長,浦幌ヒグマ調査会・事務局長,国際クマ協会・理事。白糠丘陵に生息するヒグマ個体群の生態と被害発生要因に関する研究を中心に,国後島・択捉島に生息する白いヒグマや札幌市外地周辺に生息するヒグマの研究も行っている。

佐藤氏からは、「ヒグマの出没と被害の背景とヒグマ問題における順応的ガバナンスについて」というタイトルで発表がありました。

浦幌町・白糠丘陵の例から、農地で駆除を進めると、山奥から新たなクマが流入してきてまた駆除される、という構図が続いていることが報告されました。そのため、「クマが増えている」と思って駆除をし続けてしまうと、気づいた時には山のクマがいなくなっている、ということもあり得るとのことでした。農地だけではなく、広いスケールでヒグマの動向を考えた上で、対策を考える必要がありそうです。

ヒグマの管理方針を考える上で、国や道の行政視点と、市町村の現場視点にはズレがあることから、そのズレを埋める橋渡し的な役割をDCC取得者が担うべし、との提案もありました。

参加者の方との意見交換も活発に行われました。その後の懇親会も、美味しいごはんと共に楽しみましたよー! ヒグマ編の研修会は今後も続けていきたいと思っています。みなさま、ぜひご参加ください!

(文:松浦、写真:東谷)